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多床産婦人科病棟における個人換気システムの性能

個人換気システムは居住者が吸入する空気の質を向上させるため、新鮮な空気を空間内に供給するためのものである。オフィス環境の個人換気システムに関する研究は多くあるが、病院に関してはほとんど報告されていない。個人換気システムに伴うエネルギー消費量の低減と制御の向上は、病院室内空気質を改善するだけでなく、病院のエネルギー使用量とランニングコストの削減につながる。

この研究では換気システムの設置位置および換気量違いのよる影響を調べた。ベッド上の患者に空気を送るための個人換気システムの4種類の位置についてキャノピー(天井)、枕、ヘッドボードおよびフットボードに設置された場合の換気効果をPHOENICSで評価を行った。

4人の母親(M1-M4)と4人の赤ちゃん(B1-B4)を含む典型的な4ベッド妊婦病棟(8×8×3m)をモデル化した。ドアの反対側に自然換気条件を提供するために、開口面積3.83m^2の6つの窓を設置した。各換気シナリオでは、反対側のドアの開閉に関係なくモデル化を行った。(図1)

調べる個人換気システムは病院のベッドや病棟に簡単に設置できる。人体は温度や空気流動の変化に敏感であるため、体全体に均一な状態を提供することが望ましいと考えた。

患者の呼吸は、(母親の場合)および(赤ちゃんの場合)の吸入速度を用いてモデル化した。個人換気システムは、0.3L/s、5L/sおよび8L/sの供給量でモデル化した。PHOENICSを使用して、母親とその乳幼児がおかれた空間の空気質を調べる。空気平均齢、温度および流速は、領域全体にわたって予測した。

図1 基本ケース

図2 PV(個人換気システム)の配置

(M1, B1:左下、M2, B2:左上、M3, B3:右下、M4, B4:右上)

図3は、窓位置から開始する流線(線の色は空気齢)を示す。
図3から分るように、開口部の低い位置から新鮮な空気が流入し、リビングスペースで暖められる前に患者を横切る。また、空気は全領域に広がらず、一部のゾーンで新鮮な空気が不足し、古い空気ゾーンが形成される。


図3 シングルサイドベースcseシナリオ

流線や表面コンターで母親や乳幼児の表面を通る空気年齢や呼吸ゾーンの空気齢を確認することができ、吸入空気質の予測ができた。
図4は、換気率の増加によるショートサーキット効果を示す。
図4bに示すとおり、8L/sの空気を使用した場合、大部分の空気が、母親と赤ちゃんの直ぐ上を通っていることを示す。
一方、図4aは、より小さい換気量で患者により新鮮な空気を送る方法を示す。


図4 ヘッドボード式PVの換気率の違いによる空気齢等高線

図5より、ヘッドボード式では新鮮な空気が、開口部近くに低レベルで蓄積することがわかる。
図5の後壁のドアを囲む新鮮な空気は、双方向の流れを示す。
それにもかかわらず、患者間に空気齢にはばらつきがあり、ドア近くにいる人は、開口部付近空気の約2倍の空気に曝されていることが分かる。
換気される空間の公称時定数は、その体積と新鮮空気の体積流量との比であり、排出されるときの空気の平均空気齢に等しい。
これは空気質と新鮮な空気の分布を示すために使用された。
公称時定数は、この後で局所空気交換効率を計算するために用いられた。


図5 ヘッドボード式PV 、8L/sでの空気年齢コンター

局所空気交換率は、あるゾーンに空気を供給する換気システムの能力を表す。
ここでは、母親および乳児の呼吸ゾーン内の空気の公称時定数と平均空気齢の比である。
図5の例では、公称時定数は2119秒である。
これを目安にすると、ほぼ全空間にこの値よりも若い空気が含まれていることがわかる。
即ち、母親や赤ちゃんが吸入した空気は、その空間のおよそ半分の空気齢であることを意味する。
局所空気交換率は、空気分配システムが混合された空間と同じだけの空気を供給することを示す。
図5の結果は、換気システムの局所空気交換率が単体を上回ることを意味し、この換気システムの意図した領域に空気を送達する能力が非常に良いことを示唆する。


図6 全供給速度においてのヘッドボード式PVの局所空気交換率(LACE)

すべての患者は、呼吸ゾーンが天井を向いた状態でモデル化された。
睡眠中の患者の無意識な運動などにより、患者の呼吸ゾーンもまた左右に向かうことが予想される。
これは、病院換気設計の重要な特徴であり、ベッド中心の局所・人工換気システムのために考慮する必要がある。


図7 基本ケースとその他の4つのシナリオにおいて、全患者吸入空気の平均年齢および範囲(After movement:患者が横に動く)

したがって、患者頭部の両側の呼吸ゾーンをそれぞれ設置することで昼夜の患者の動きを模擬した。
頭部両側の呼吸ゾーンについて、ゾーン内の気流速度、空気年齢および体温を比較することにより、この運動の影響とシステムの有効性を決定した。
ヘッドボード式およびフットボード式での結果から見ると、呼吸ゾーン内の空気質は同等である。(図7)。
より簡単な比較のため各換気シナリオにおいて、すべての患者が吸入した空気齢の平均をとり、患者と窓との距離によって生じる位置の影響を無視した。

母親と乳児の身体表面の空気齢コンター図を分析することで、患者の身体全体の風速と温度の変化を調べた。
キャノピー式は、テストされた4種類の中で最も新鮮な空気を呼吸ゾーンに供給した。
しかし、この方式体全体の熱と空気の速度に大きな影響をもたらす。
頭部は、かなりな速度で動く冷たい空気に曝されるため、潜在的な危険性がある。母親の身体全体の温度変化の予測を図8に示す。

図8では、高速給気の水平送達に関連するショートサーキット現象を強調している。
ヘッドボード式に注目すると供給速度の増加により、体温がより低くなることが分る。
この結果、呼吸ゾーンを意図した供給空気がこの領域を超えて患者に不快感をもたらす可能性が出て来る。

この研究から分るように、患者の動きに対応し、望ましい均一条件を提供と同時にドラフトを避けるためには、空気質のある程度の妥協が必要である。
PHOENICSで行った数値解析作業では、調査した4つの構成のそれぞれが提供する一連の結果を示しており、現在実験検証が進行中である。
この作業は、病院の病棟に適したベッド中心の人工換気システムの選択を支援し、評価基準の1つとして省エネ機能を組み込むのに役立つことが期待される。


図8 母親1の体表面温度の変化


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